治療学を強調し臨床薬理学の重要性や面白さを伝える薬剤師の臨床薬理学教育について討論する安藤氏と福土氏1)臨床薬理学教育と仲間作りについて後々言ってくれる若手もいます。まず、身近なところから、きっかけづくりを続けていきたいと思っています。施設内外問わず仲間を増やし、共同研究を実施していくなど活動を続けていきたいと思っています。〈安藤〉非常に良いですね。私もぜひ、そうしたいとは思っています。実際の臨床の場では、添付文書とおりで本当に良いのかと疑問を感じることが少なくありませんが、医学生が臨床薬理学の講義を聞いてもピンとはきません。臨床で悩んだときにその必要性、重要性がスッと入ってくると思います。〈庄司〉そうですね。若手の小児科医が考えることは、まず専門医を取ることで、その次にサブスペシャリティとして小児感染症や呼吸器、循環器などの選択肢が出てきます。アメリカでは臨床薬理もサブスペシャリティのひとつとして横並びですが、日本ではどちらかというと各臓器別の専門に分かれており、そのなかで薬関係の研究をしている人が臨床薬理学に徐々に興味を持っていく形ですから、臨床薬理に触れる段階が遅いとは思います。〈乾〉アメリカの薬学部での経験が非常に大きかったというお話でしたが、アメリカの教育が良かったのか、あるいは日本で受けた医学部での教育が十分ではなかったのか、どちらでしょうか。〈庄司〉私が医学部の講義で記憶にあるのは、臨床に直結する臨床薬理学を教わったというより、トランスポーターの話など、基礎医学的な内容が多かったという印象です。アメリカの教育で良かったところは、一方的に与えられる授業ではなく、班ごとに1つのテーマが与えられ、いろいろな計算をし、投与設計を考えるような実習が多かったことです。私自身は日本の薬学部での教育を受けた経験はないので、日本の薬学部教育も経験されている先生に日本の現状をうかがいたいですね。〈肥田〉薬学部では、薬物動態については専門の講義科目があり、臓器別の講義とは切り離されているため、医師が学ぶ臨床薬理学と薬剤師が学ぶ臨床薬理学とでは、少し異なるように感じます。学習の方法といった点では、教育改革が進んできていますので、グループごとで症例をディスカッションしなが薬物動態等のデータは足りていないので、データを増やしながら必要な薬を、常に最適な方法で子供たちに投与できるようになればと思います。そのためには、臨床薬理学が分かる仲間を増やしていくことも必要であり、何よりも教育が重要になります。個人レベルでは自施設内で薬剤師レジデント、若手医師への臨床薬理学的な教育活動を続け、学会のようにより大きな活動につなげていきたいと思っています。小児に関しては発達・発育の要素もあり、個人差が大きく、重篤な病気の子供ほど重症の感染症を起こしやすく、薬物動態も通常集団とは異なってくることがあります。したがって、個別化し最適な薬を提供することが一番の目標になっていくと思います。ファーマコメトリクスも活用し、そういう点を意識しながら今後の活動を続けたいと思っています。〈安藤〉前半の話でもいくつかキーワードがありましたが、いま、庄司先生に要点をまとめていただいたと思います。つまり、いかに教育、指導をして仲間を増やしていくか。そして個別化医療をどう推進していくかという、2つが大きなキーワードではないかと思います。そこでまず、臨床薬理学者をいかに増やしていくか、普及させていくかということについて、自由に発言いただく形にします。〈庄司〉私は個人的には若手医師の教育が好きということもありますが、現在は小児科専攻医向けに年間20回、2週間に一度ぐらいの系統講義で、感染症や研究のことを教えています。そのなかに1回は臨床薬理学的な内容を入れています。それだけで何ができるわけでもありませんが、比較的若手医師から研究の相談を受けることが多いので、その際にさまざまな研究の可能性を話しています。小児科専攻医が小児科専門医を取るためには必ず論文が1報必要で、病院の中では専攻医にいかに論文を書かせるかが大きなテーマになっています。最初は症例報告のような形が多いのですが、ただ単に症例経過をまとめるのでなく、症例によっては薬物血中濃度や薬物動態解析の結果も含めて臨床薬理的なエッセンスを加えると論文の価値が上がると指導しています。少しでも研究に興味を持ってくれればうれしいなと思っています。実際に専攻医のなかには、「研究に興味を持ち、大学院に入りました」など、79
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