臨床薬理の専門性浸透には実践する姿を見せることも大事たプロフェッショナルの先生方が臨床のなかでできることは多く、すごく期待が大きいと思っています。〈平井〉首都圏で在宅医療を中心に非常にがんばっている友人がいますが、新型コロナの時には、患者宅の入り口で防護服に着替えて、酸素の機械も運んで酸素投与することも実践していました。彼らの仲間は首都圏にいくつもキーステーション持っていまして、東京都内のある区の医師会とは契約を結んで、夜中の患者さんはそのキーステーションが受け持つという取り組みもしていました。病院診療と同じことはできなくても、かなり近いことは在宅でもできると言ってました。ただ、そのグループの中には薬剤師は入っていません。入ってはいないのですが、在宅薬物療法などがんばってくれている薬局はあります。その地域薬局との連携によって非常に助かっていると言ってました。ですから、必ずしも中に入っていなくても、個別で連携することはできますし、そういう連携ができる地域が増えていくことが期待されます。〈渡邉〉医療の形が変わってくるなかで、院内だけなく地域医療とさまざまな場面での多職種連携が大事ですね。〈平井〉標榜科のことは別として、2050年に向けて今後は総合診療科などがひとつの方向性なのだろうと思います。ただ、それをバックアップしてくれる体制が必要ですし、うまくいくか否かは、多職種が相互にどれだけコミュニケーション、連携が取れているかに依存すると思います。〈渡邉〉臨床薬理の標榜科や専門医制度のことは人数の問題もあって、なかなか難しいと思います。バックアップする、各科をつなぐという意味で、臨床薬理の専門性を持とうと思う若い先生方を増やす、そのための工夫、努力はしていかなければならないと思います。臨床薬理を学ぶメリットは少なくありません。患者さんへ質の高い医療を提供する上で、臨床薬理の専門性を持っていることで貢献できると思います。〈家入〉臨床薬理専門医が、例えば高血圧症の患者さんに5剤使っていたのを、「この3剤です」と指導するなど、その専門性が知られ、さらに、その業務に点数をつけましょうとなると、話は変わってくるのではないでしょうか。〈渡邉〉現場にそういう専門性を浸透させていくよう私たち自身が伝え、かつ実践していなければいけないと思います。また大学の講座で臨床薬理の教育機会を増やしていく。かつ臨床薬理講座の先生方が活躍している姿を見せていくことも重要です。臨床試験や臨床薬理でのサポート体制を整えることも重要ですが、自らプレイヤーとなり、エビデンスを発信する姿を若い方々に見せるということが非常に重要だと思います。ついこの間、浜松医大のNSAIDにより胃が荒れる場合は、消化器の薬を2つ、3つと追加するのではなく絞り込みました。また、病名に応じ必須な薬は削除せず、それ以外を削除すると、多い時に15種類あった処方が5種類になり、患者さんは、何もなくて退院しました。他院から紹介で来られたある患者さんが、状態が良くなって退院すると元の医院に帰ったのですが、ある時、その院長から、「なぜ○〇という薬を投与するんだ」と、いわばクレームが入りました。しかし、その院長本人が出していた薬だったのです。医師は自分の処方を削られたり、変えられることを非常に嫌うのですが、そこに根拠がない場合もありますので薬剤師の方は、随分苦労されると思います。いずれにしても必要最小限にすることが重要です。大きい病院だったら薬剤部で、どういう薬が出ているかは把握していると思いますが、強くは言わないのではないでしょうか。〈家入〉環境にもよりますが、医師と薬剤師の関係性がうまくいっているところはうまくいっています。〈藤村〉先ほど治療学における臨床薬理の重要性について話が出ていましたが、私は医師、医学生に対して医学教育を受けていても万全ではない。いろんな人の話を聞かなければいけませんと伝えるようにしています。しかし、世の中には「なんで俺の処方にケチをつけるんだ」と言う人も結構いるのは事実です。〈渡邉〉やはりアート、医療コミュニケーションが重要ですね。森下先生いかがですか。〈森下〉今の先生方のお話を聞いていると薬物療法に対する研修医の先生のご苦労、あるいは一生懸命考えてる姿が思い浮かびます。平井先生もおっしゃいましたが、確かに先生方は24時間ベッドサイドにいられません。もしもに備えて不安時、不眠時と、薬が増えることはあります。それは患者さんのためでもありますが、当直帯の看護師への配慮という面もあるのかなと思いながら、お話を聞いていました。本日、ここにいらっしゃる先生方のように、若い先生にも臨床薬理学の知識を患者さんに処方する上でのお作法として身につけるという意識を持ってくだされば、看護師やコメディカルと会話できる機会も増え、私たち看護師も薬学の知識が増える機会につながると感じました。一方、いろいろな医師がその専門性で患者さんを診ていますが、それをつなぐ先生がいないことが一番怖いと思います。在宅医療において訪問診療と訪問看護とが連携していますが、臨床薬理学を習得し70座談会
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