研究に加え「教育、社会貢献、社会活動」の実践が重要これからの臨床薬理学に必要な取り組みについて討論する渡邉氏と中野氏3.2050年に向けた臨床薬理学の 生き残りと将来展望について学を推進することで、生き残っていけると思います。米国留学中に、いろいろなところを見学しましたが、臨床薬理学のアプローチの仕方には多様性があり、それぞれの特徴を生かしていました。なので、自分の得意な領域を持った上で、臨床薬理学の研究、教育、社会貢献をしていくことがとても重要なのだと思います。これからの方々にもそのようにしていただきたいと思います。そして、一般の方も含めて薬物治療を受ける以前に、自分の健康を自身で守っていくという意識付けが、これから重要になると思います。その上でより良い医療をつくっていこうと、皆に語りかけていくことも臨床薬理学に取り組む人間のひとつの使命だと思います。そのなかに薬が正しく位置付けられていることが重要だと思います。〈平井〉健康づくりという意味では、子供の頃から栄養のことなど基礎を教えてあげないといけません。例えば、三大栄養素のことも驚くぐらい知りません。そういう基礎的なことを含めて教育のなかに取り入れていく必要があると思います。〈渡邉〉中野先生はひとつの専門を持ちつつ臨床薬理の専門性を持つことの重要性をご指摘になられましたが、そのタイミングについていかがですか。〈中野〉どちらが先とは言えませんが、この時期は臨床の専門性に集中し、この時期は臨床薬理学に集中するという形が効率的のような気がします。〈渡邉〉平井先生はいかがですか。〈平井〉中野先生がおっしゃるように、それぞれのバックグラウンドがあり、臨床との関わり方は違いますが、患者さんや国民の幸せのためにがんばるということは共通しています。そのため臨床薬理の専門家は必要ですが、臨床薬理学は医療に関わる人の基本的な素養、いわば常識として知っておかなければならない学問のベースだというメッセージを発信していくべきだと思います。〈中野〉私も賛成です。例えば中学の教科書に治験を含めて、医薬品はこのようなプロセスを経て誕生し、私たちが恩恵を受けることができていることを、解説する必要があると思います。新しいより良い医日本臨床薬理学会が毅然とテレビ局に抗議をしてくださいました。当時、私たちはCRCの人材育成の取り組みをがんばっていましたので、学会として最初に申し入れしてくださったことは、本当に心強く、感謝しています。と同時に学会に入って、自分たちの地位を守ってもらうというか、意見を言う場を作ることの大切さを感じました。〈渡邉〉テレビ局にはCRCの方々が貢献してくれているにも関わらず、世間に誤解を与えるようなメッセージを発することは非常に残念だと抗議しましたが、他にも、CRCの役割や治験の重要性などの話をさせていただきました。〈中野〉ドラマの内容が現実とは違って、面白おかしく作られていたので、CRCの方々は相当ショックを受けただろうと思います。〈森下〉CRCのなかでは未だに語り草です。〈渡邉〉次に臨床薬理学の将来について伺いたいと思いますが、初めに私からお話しさせていただきます。先ほど専門医制度についてお話がありましたが、各医学領域は患者さんから見た専門性を謳って専門医制度を整備しています。一方、臨床薬理学は、医師、薬剤師も含め、どの専門領域の先生にとっても必要となる横断的な領域です。各専門領域、例えば循環器領域には循環器専門医として薬物治療や医薬品開発に取り組む先生が存在する中で、臨床薬理学として活動の場を広げていくためにはどこにスコープしていったらよいでしょうか。例えば、多剤併用の問題は重要な部分だと思います。専門の先生がそれぞれ薬を処方し、結果として多剤併用となり、何か問題があるかもしれないという時に、最適、最良の多剤併用療法を提案することは、臨床薬理の先生しかできないのではないかと思います。さらに、臨床試験の重要性を教育していくことも大事だと思います。先生方が将来大事だとお考えになっていることについてお話いただけますか。〈中野〉昔から言われていることですが、臨床薬理学を専門にする人も、研究だけでなく教育と社会貢献・社会活動の3つの柱は、何らかの形で実践していくことが大事だと思います。また、臨床薬理学には専門性がないといわれますが、例えば循環器の専門、精神科の専門、薬剤師であって臨床薬理学に取り組むというように、ご自身の柱は持ったまま臨床薬理65
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