財団から提供される資金は 研究を継続する上でとても大切「認定CRC」はモニターや監査員など多様なキャリアの土台い結果が出る可能性もあったと思います。少なくとも、特定の薬物等では良い結果が得られたかもしれません。例えばABCDと順番に研究をしていくなかで、AあるいはBまでで終わってしまっては、なかなか行き着きませんので、臨床薬理研究振興財団から提供いただける研究資金はとても大切だと思っています。〈渡邉〉ありがとうございます。次に森下先生、お願いします。〈森下〉私の場合、研究面で貢献することはできませんが、研究を支援する人材育成という立場で、臨床薬理研究の後押しが担えると思って、活動してきました。自分でも一番よい経験となったのは、日本臨床薬理学会の認定CRC制度委員会で委員長を務めさせていただいたことです。コロナ禍直前の2018年から2019年頃、次第に認定CRCの受験者数が減ってきた時期でした。私は若いCRCの人にも日本臨床薬理学会に入ってほしいと思い、看護師や薬剤師など、多様な職種のCRCにとって、どうすれば学会との接点を増やせるだろうかと考えてきました。具体的には認定CRC制度委員会の中で広報活動のあり方や試験制度の工夫を含め、受験機会の増強策などについて活発に議論しました。私はCRCを本職としてきましたが、なかにはプロジェクトマネージャー、モニターや監査員になったCRCもいます。ただ、皆さん、最初の一歩としてCRCから始めていらっしゃる人が多いので、そこではきちんと治験や臨床研究の作法を学んでもらって、次のキャリアステップとして、いろいろな立場から研究支援者としての道を進んでいただきたいと思っています。その土台作りとしての最低限の目標は日本臨床薬理学会の認定CRCを受けるところだと思っています。また、中野先生が最初に認定CRC試験のためのCRCテキストブックを作ってくださり、私が認定CRC制度委員長の時に、それを元に第4版に着手しました。2~3年ぐらいかかりましたが、出版できたことも、人材育成という意味で貢献できたのではないかと思っています。〈渡邉〉ありがとうございます。〈家入〉今、学会活動の話が出ましたが、時事問題に対してタイミングよくレスポンスしていくことも大事だと思います。臨床研究法の制定の時には、当時の理事長でおられた渡邉裕司先生、植田真一郎先生と厚労省を訪問し、臨床研究法施行規則の中に、てこられなかったとおっしゃいましたが、ドライバー遺伝子を標的にして必要な人に、必要な薬を、必要なだけ届ける、まさに臨床薬理の真髄の研究をされてこられたのだと思います。三木市は少し特殊だったのですか。〈平井〉日本人の遺伝子多型の比率とはちょっと違いました。割と内陸部側なので、その地域に定着して住んでおられる方が多かったということもあると思います。〈渡邉〉次に、家入先生お願いします。〈家入〉私の場合、バックグラウンドはTDMですので、個別的薬物療法がテーマです。その点を意識して、薬学部に移りました。日本では臨床薬理学研究といっても、ほとんど人ではされておらず、臨床データは全部外国のデータでした。当時、なんで日本ではできないのだろうと思っていました。ところが、ある偶然の出会いがあって、きちんとフェーズ1の試験をしてくれる施設と巡りあい、相談の末、気持ちよくいろいろなことを引き受けていただきました。その出会いがなければ、多分、私の研究領域での展開はなかった。非常に恵まれていたと思います。少しずれますが、日本の研究環境は、最初は資金も出て良いのですが、先ほどの藤村先生のお話にあったトランスポーターの研究、遺伝子多型の研究も、始めた当初は研究費も付いて進むのですが、途中で終わってしまう。継続性があまりないのです。研究は継続していくことで、いろいろなことが分かり、もっと有用なデータも出てくるものですが研究費の問題で、途中でダメになってしまいます。ですから最近の例では、ビッグデータの取り扱いも、今はもう論文にならないのです。いろいろなデータが出てきて、結果が出てくるのですが、それを論文に投稿するとリジェクトが多いのです。〈渡邉〉リジェクトが多いのはなぜですか。〈家入〉もうはやらないからです。しかし実際は大事ですのでデータは蓄積されていきますが、それを披露する場もなく、だんだん研究費も付かなくなって、尻すぼみになってしまいます。そういう状況はよろしくない、もったいないなと思います。〈藤村〉多くの場合、役所の担当が変わったら変わるのです。一時期、iPS細胞の研究でも、途中で打ち切られそうになりました。あれもそういう状況があったと思います。〈家入〉藤村先生のご研究で中毒治療へ活用していくというアイデアがありましたが、続けていれば良63
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