治験体制の基盤整備の きっかけを創った 「医薬品安全性確保対策検討会」医療の基本構造標準化医療コミュニケーション個別化EvidenceBasedMedicineNarrativeBasedMedicineサイエンスエビデンスを創るアートエビデンスを使う2.臨床薬理学との関わりと研究活動の 変遷を語るエビデンスを創るプロセスは、“標準化”になるが、エビデンスを使うプロセスは、“個別化”が重要になる。医療の基本構造(中野重行)療コミュニケーション」の教育や模擬患者の育成につながっています。結局、私は若い頃は心身医学を学び、その延長線上で向精神薬を学んでいるうちに臨床薬理学の専門家として働くことになりましたが、大分に赴任してから臨床薬理学と心身医学の両方ができるようになったことは、天からご褒美をもらったような感じがしています。平井先生は現在「傾聴外来」を担当されているということですが、「傾聴」していると患者さんのなかでいろいろなことが整理されて解決していくということがよくあります。逆に言えば、現代医療のなかであまり話を聴いてもらえていない患者さんが多いということかも知れません。〈渡邉〉ありがとうございました。今の傾聴のことも含めて、以前、中野先生は医療の基本的な構造をサイエンスとアートという切り口でご説明になっておられました。大切なお考えだと思います。〈中野〉図は、医療にはサイエンスが得意とする領域と苦手とする領域があることを「医療の基本構造」として図示したものです。薬物や医療機器などは臨床試験を行って科学的に評価して「標準化」します。その薬物や医療機器を患者さんに使う際には、多様性に富んだ幅のある患者さんが対象になりますので、「個別化」して使用する必要があります。標準化と個別化のプロセスは、サイエンスが得意としている領域です。これを支えているのが医療者と患者さんの信頼関係で、治療のパートナーシップを作り上げるためには「医療コミュニケーション」が重要になります(図:医療の基本構造)。〈平井〉治療する主体は患者さんのですので、医療者とのパートナーシップが大事ですね。〈渡邉〉ここからは先生方ご自身の臨床薬理学との関わり、どういう研究や取り組みをされてきたかをご紹介いただきます。そして、2050年に向けた臨床薬理学の将来展望や次世代研究者への期待などを伺いたいと思います。まず、初めに中野先生からお願いします。〈中野〉私は心身医学を勉強していた若い頃から、プラセボ反応に興味がありました。プラセボ反応を研究するためには、薬物の効果を科学的に評価できるようになる必要があると思ったのが、臨床薬理学の研究を始めた大きなモチベーションのひとつでした。先ほどもお話ししましたが、九州大学薬学部薬理学講座の研究生にしていただいて最初に行った研究が、「プラセボ反応に関与する要因に関する実験的研究」でした。プラセボ反応が出やすい説明の仕方、プラセボ反応が出やすい性格特性について論文にしました。59薬物医療機器ハード患者ソフト医療者ソフト
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