50年のあゆみ
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学会活動を含めCRCの育成などにより「臨床研究」を支援家入一郎 氏タイトルで了承していただいた思い出があります。その後、堀先生たちが中心になって「日本医療薬学会」が設立されましたが、薬学の人たちは「医療薬学会」の方が参加しやすい名称だったように思います。もし「日本臨床薬学会」という名称になっていたら、今のように大きく発展していなかったのではないかと感じています。先ほどお名前が出た樋口駿先生とは、とても親しくさせていただきました。樋口先生は薬学の方ですが、臨床のことをよくご存じでした。また、家入先生の同級生の大戸茂弘先生は、私が愛媛大学にいるときに大学院生として来られて、人と動物を対象にした時間薬理学の研究を一緒にしました。その頃から日本臨床薬理学会で発表していました。家入先生のお仕事は、ベッドサイドではないかもしれませんが、薬物治療の現場でも役立つという意味で、臨床薬理学の領域の研究だと思います。〈渡邉〉次に森下先生お願いします。〈森下〉私は看護師なので、臨床薬理学との最初の出会いは看護学生の時に臨床薬理学の授業を受けたことになります。ただし、先生方のように深く学んではいませんでしたので、この座談会の場にお招きいただいたのは、CRCが医療の中で、一般的な職業として認められ、多少でも臨床薬理学に貢献しているという意味でお声がかかったのかなと思います。そこでCRCの歴史という形で振り返らせていただきます。私がCRCの仕事についた最初のきっかけは、1998年、当時の厚生省が主催した治験コーディネーター養成モデル研修に参加したことです。当時、中野先生が新GCP普及定着総合研究班の研究代表者をお務めになっていました。この研究班は6つの作業班とこれらを統括する統括班があり、インフォームド・コンセントのあり方検討作業班や治験支援スタッフ養成策検討作業班など、将来のCRCのあり方や治験実施体制の基礎となる検討が行われました。その成果のひとつとして日本初のCRC養成モデル研修が行われました。私も全国から22人の研修生が参加した中の一人として参加しました。ただ、研修を受けたのち、CRCとして何をするのかということになると、まだ全国にも22人しかいませんし、その役割や業務も未だはっきりしていなかった状況でした。私たちは0期生と呼ばれ、その次の1期生も確か30人程度と非常に少なかったと記憶しています。そのため各CRCの活動内容を共有化して、全国臨床薬理という立ち位置ではありませんでした。元々、TDMを通じて治療には興味があり、薬物治療を個別化していくには、どうしたらよいのかということはずっと考えていました。松山市で開かれた日本臨床薬理学会学術総会は渡邉先生が理事長をされていたと思いますが、その時に理事に推薦していただき、そこから臨床薬理との付き合いが始まりました。それ以前は学会や財団ともなじみがなく、歴史としては浅いのです。ただ、取り組んできたことが薬物治療でしたので、そこは共通していたといえるかもしれません。当時、私の上司の樋口駿先生が薬物治療に関して、いろいろと工夫される方で、その影響はかなり受けました。平井先生も薬剤部での研究は動物中心だったと思いますが、ある時、臨床の先生方と共同研究をし、演題を学会に出したことがあります。たぶん、平井先生と私とでは時間差がないと思いますので、医師と薬剤師連名で演題を出すことが稀だったのはお分かりかと思います。いずれにしても臨床医との共同研究を通じ、本格的に臨床薬理とつながるようになり仕事も増えていきました。ところで中野先生が先ほど、臨床といえばベッドサイドという言われ方をしましたが、私たち薬学の人間にとってベッドサイドという認識はありません。当時の薬学では未だ細胞はあまり使っておらず、むしろ動物中心の研究でした。ですので臨床というと人というイメージでした。中野先生の話を聞いていて薬学とMDとの認識の違いを、ふと思い出しました。〈中野〉薬学では「臨床薬学」とはいわずに、「臨床」という言葉の代わりに「医療」という言葉を使って、「医療薬学」といっていますよね。1980年代の終わりごろに「臨床薬物治療学大系」という全21巻の全集を編集したことがありますが、「臨床薬理学」の項を私が執筆して、「臨床薬学」の項を京都大学薬剤部長の堀了平先生が担当されたことがあります。その時、堀先生は「医療薬学」というタイトルに変えて執筆されました。それを見た監修者の砂原茂一先生が、編集会議で「臨床薬学」を主張されたことがありました。私が、砂原先生と堀先生の間に立って、「医療薬学」という言葉を使う理由をお聞きしたことがあります。堀先生は、臨床を支える周辺の仕事が薬学にはたくさんあるので「医療薬学」の方が相応しいというお考えでした。私も納得できましたので、砂原先生にお伝えして「医療薬学」と56座談会

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