50年のあゆみ
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スタートアップの時代から 数多くの第一相試験を実施藤村昭夫 氏りました。中島先生とは異国の地で臨床薬理学の将来について、熱く語り合えたことをとても懐かしく思い出します。〈渡邉〉ありがとうございます。当時の研究会では、どのような先生方が活躍されたのですか。〈中野〉砂原茂一先生が初代会長を務められ、柳田知司先生、佐久間昭先生らが活躍されていました。〈渡邉〉その臨床薬理学研究会ができた頃というのは、海外でも臨床薬理学が非常に発展する時期であったと思います。2006年にイギリスのColinTDollery氏が、Clinicalpharmacologythefirst75yearsandTheViewofTheFutureという論文を発表され、臨床薬理学の歴史を振り返っていますが、わが国でも臨床薬理研究財団が発足した頃から臨床薬理学に対する関心が非常に高まってきたのですね。〈中野〉その意味では、私が1975年に第1回海外研修員に選ばれた時に、留学先としてはヨーロッパと米国が候補になりました。最終的に米国を選んだ理由のひとつは、当時、米国のほとんどの大学に臨床薬理学コースがあり、臨床薬理学者の育成も盛んで、活気を感じたからです。私の留学先のスタンフォード大学のあるサンフランシスコ・ベイ・エリアは、医師の臨床薬理学者と臨床薬物動態学を専門にする薬学の方が協働して「合理的薬物治療」を追求するスタイルが特徴でした。当時の米国は西部ではUCサンフランシスコとスタンフォード大学を中心に、東部ではロチェスター大学の薬理学講座を中心に臨床薬理学を発展させていましたが、他の地域でも、それぞれに特徴を持った臨床薬理学のアプローチが発展していることを学びました。〈渡邉〉続いて藤村先生、お願いいたします。〈藤村〉私は当初10年ほど海老原昭夫先生の元で臨床薬理を学んできました。実は、私が金沢大学内科の大学院3年生だった時に主任教授から、海老原先生が大分で新しい講座を作るので「2、3年、大分に行かないか」と言われて、何をするかも聞かないまま大分に行きました。海老原先生は1974年に日本で初めて臨床薬理学講座を自治医科大学に設置され、その後1982年に大分医科大学(現大分大学)で臨床薬理学講座を開設するという時期でしたが、私自身は臨床薬理学、薬理学を詳しく勉強したことはなかったので、臨床薬理とは何をするのかも分からない状態で助教として赴任し、そこで臨床薬理学を学び、以来40年が経ちました。初めに何をしたかというと海老原先生が高血圧の診療をずっとされていたので、私も高血圧患者の外来および入院患者の診療をしていました。また第一相試験をたくさんさせていただきました。当時、わが国の第一相試験のスタートアップの時期で、請け負う会社は少しあり、われわれも第一相試験に携わり、そのなかで薬効評価のプロセスなども教わりました。そういうことが数年続いた後に1986年から1988年まで2年間、臨床薬理研究振興財団の海外留学等補助金事業の海外研修としてオクラホマ大学へ留学させていただきました。ただ、留学先は内科部門でした。帰国後の1989年に海老原先生が自治医大に復帰されて、その後、中野先生がいらっしゃいました。〈中野〉私が赴任したのは1989年11月1日ですが、藤村先生が11月末まで大分医大に残って引き継ぎ作業をしていただきました。〈藤村〉ということで中野先生と1か月間、オーバーラップしています。12月には自治医科大学に赴任し、1994年に海老原先生が定年退職されるまで、海老原先生の元で臨床薬理に携わり、第一相試験も随分とさせていただきました。その頃には、先ほどお話に出た中島光好先生も浜松医大で積極的に第一相試験をされていたことを覚えています。ということで海老原先生の元で、行わせていただいた主な研究は、臨床試験としては第一相試験ですが、海老原先生は第一相試験の主要なパイオニアでした。振り返ると大分には実質5年間でしたが、その時の第一の思い出といえばフグです。肝をペーストにするというのはありますが、ブロックで食べる、それが当たり前だと思っていました。しかし実際には当たり前ではなかったのです(笑)。〈渡邉〉日本臨床薬理学会での活動についてもお話しいただけますか。〈藤村〉学会では認定医制度、今は専門医制度といっていますが、専門医制度に関与させていただきした。専門医制度は1991年に発足し、2年目は専門医が60人と少なかったのですが、その後急速に増え1996年には140人になりました。その後、特別認定医という枠組みを作りました。これは臨床研究を盛んに行っている全国の教授の方にお声掛けして専門医になっていただく制度です。その結果、1998年にはトータルで310人となりました。しかし、残念ながら特別認定医の先生方が更新されず、徐々54座談会

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