47臨床薬理研究振興財団設立50周年、誠におめでとうございます。長きにわたり財団を支えてこられました歴代の役員、関係者の皆様に心より感謝申し上げます。 この機に、私と臨床薬理学の関わりについて振り返ってみたいと思います。私は1985年に京都大学薬学部を卒業後、堀 了平教授が主宰される京都大学医学部附属病院薬剤部(医療薬剤学講座)に修士課程の大学院生として進学しました。研究室のテーマは「薬物動態と薬効の基礎から臨床まで」で、私自身はなかでも臨床に最も近く、当時最先端の「患者データを用いた母集団薬物動態解析」に携わることになりました。初めての学会発表は、1985年の第6回日本臨床薬理学会学術総会(別府)でした。その後、ファーマコメトリクスの祖であるUCSFのSheiner教授とBeal教授のもとに、1998年から1年間留学し、直接指導いただきましたのも私の大きな財産となっています。 以来長きにわたって、薬物動態と薬効のモデル解析に関する研究に携わってきましたが、財団とは忘れ難いご縁があります。それは、平成17年度(第30回)研究奨励金を頂戴し、研究報告書「カルシニューリン阻害剤の体内動態と薬効の速度論的解析に基づく個別化投与設計法」を提出したところ、思いがけず第1回臨床薬理研究振興財団研究大賞の栄誉にあずかったことです。本当に有り難く思いましたし、その後の臨床薬理研究に対する励みと責任に今もなお繋がっています。私が研究に携われる期間も残り少なくなってきましたが、優れた臨床薬理研究者を一人でも多く育てること、薬物療法のアウトカム改善につながる実践的な研究を残すことで、臨床薬理学への恩返しをさせていただくことができましたら幸いです。 最後になりましたが、臨床薬理研究振興財団の益々のご発展を祈念いたします。臨床薬理研究振興財団が設立50周年を迎えられましたことを心よりお祝い申し上げます。設立以来、50年にわたり研究助成事業等を通じて多くの臨床薬理学研究者をご支援いただき、臨床薬理研究振興財団が日本の臨床薬理学の普及と発展に大きく貢献されてきたことに深く敬意を表します。 これから新しい治療学が始まると期待を胸に臨床薬理学の世界に飛び込んだ私にとりまして、日本臨床薬理学会とともに臨床薬理研究振興財団からのご支援は、大きな力となりました。大学院生時代、さらに循環器内科医として臨床現場にいた時代に臨床薬理研究振興財団より研究奨励金をいただく機会を得ました。臨床研究での公的研究費獲得が難しかった当時、研究助成をいただけたことは臨床薬理学研究を行う者にとって大きな励みとなりました。とくに研究大賞をいただいた研究成果がその後の薬物血中濃度モニタリングの保険適応に繋がり、診療ガイドラインに反映され、安全な薬物治療に少なからず貢献できたことは私にとって大変意義深いものでありました。また、日本臨床薬理学会においては臨床薬理研究振興財団賞学術奨励金を交付いただき、当時まだ探索的評価項目であった生活の質(quality of life)をエンドポイントとする臨床研究の可能性について予備研究を行うことができました。この経験は、その後の抗不整脈薬を用いた多施設共同臨床試験に繋がりました。このような臨床薬理学研究に挑戦できたことは臨床薬理研究振興財団のご支援があったからこそと、深く感謝しております。 薬物治療の進歩に臨床薬理学は不可欠であります。私たち世代はこれまで諸先輩方から多くのご指導、ご支援をいただきました。今度は私どもが次世代の臨床薬理学研究者たちが活躍できるために尽力したいと考えています。臨床薬理研究振興財団のさらなるご発展を心より願っております。矢野 育子志賀 剛50周年記念誌に寄せて~私と臨床薬理学~臨床薬理研究振興財団設立50周年に寄せて神戸大学医学部附属病院 教授・薬剤部長公益財団法人 臨床薬理研究振興財団 理事東京慈恵会医科大学 臨床薬理学講座 教授一般社団法人 日本臨床薬理学会 理事長3850周年に寄せて50周年に寄せて
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