臨床薬理研究振興財団設立50周年によせて公益財団法人 がん研究会 研究本部 本部長公益財団法人 がん研究会 がんプレシジョン医療研究センター 所長国立研究開発法人 国立がん研究センター東病院 名誉院長大津 敦公益財団法人臨床薬理研究振興財団設立50周年誠におめでとうございます。わが国での臨床薬理研究の推進に大きく貢献を果たされてきたことに改めて敬意を表します。 私はがん薬物療法開発研究に30年以上携わってまいりましたが、今のような薬物療法の隆盛が訪れるとは全く予測しておりませんでした。30年前の状況を考えても、殺細胞性抗がん剤が主流であったとはいえ有効な薬剤は非常に限られ、固形がんにおいては治療効果も極めて限定的でありました。その後分子生物学研究や創薬技術などの目覚ましい進歩により、ほぼすべてのがん種において薬物療法は必須の治療となりました。さらに、昨今のチェックポイント阻害剤をはじめとした免疫療法やADC製剤をはじめとした新規バイオ医薬品開発などで大幅に治療成績も向上し、ゲノム・マルチオミックス解析技術の長足の進歩と相俟って個別化治療も急速に実装化されています。これらの開発薬剤のパラダイムシフトに応じて求められる臨床薬理研究も大きく変化し臨床薬理研究への支援事業も重要度が高まっています。同時に薬剤開発のグローバル化に伴い、国際的に活躍する医師・薬剤師の人材育成も重要であり、本財団での海外留学支援事業なども大きな役割を果たしていると感じます。そのようながん薬物療法の歴史的経緯を踏まえても、当財団が50年の歴史を持つことに改めて感嘆しています。薬物療法の黎明期から、臨床薬理研究や人材育成等の支援に貢献いただいていることはアカデミア研究機関としても大変ありがたいことです。昨今わが国のアカデミア研究力低下が叫ばれ、その原因として国からの交付金をはじめ研究資金の減少が指摘されている中、財団の取り組みは大変貴重な支援事業であり継続的なご支援をお願い申し上げる次第です。 臨床薬理研究振興財団設立50年に寄せて国際医療福祉大学福岡薬学部 学部長・教授公益財団法人 臨床薬理研究振興財団 理事国立大学法人 九州大学 名誉教授家入 一郎臨床薬理研究振興財団設立50周年、誠におめでとうございます。 私と財団とのお付き合いは、1996年研究振興財団賞の受賞から始まりましたので、約30年前となります。非常に永い間、わが国の臨床薬理学の振興に尽力され、多くの成果を挙げられています。臨床薬理学に特化した様々な助成や支援は、極めて特徴的で、なかでも、研究奨励金交付によって、どれだけ多くの臨床薬理学研究者が自身の研究を円滑に遂行できたことでしょうか。私も選考委員を数年担当いたしました。その際、感じたことは、競争率(採択件数/応募件数)はそれほど年度間で差が無い印象ですが、年を追うごとに良く吟味された意義深い科学的な応募課題が多くなったと思います。特に、臨床研究の場合、申請時点において、IRB承認が必須になった頃からその傾向が強くなったように感じます。実質的な競争率の上昇を背景とする臨床薬理学研究者の質の向上がひとつの具体的な振興成果と言えるでしょう。もうひとつ、臨床薬理集中講座が挙げられます。私の専門は、薬学なので、医薬品の個別適正化使用をひとつのゴールと設定しています。そのために修める知識は非常に広く、専門的です。短期間で必要な知識を著名な講師からまとまって学習する機会はあまりありません。また、集中講座の良いところは、医師、薬剤師、看護師などの志を同じとする多種職の若い医療スタッフが一堂に集まり、学習のみならず、情報交換の場として活用される点にあろうかと感じます。また、集中講座後もこの交流が続いており、共同研究などのネットワークとして維持されていると聞いています。 研究の展開やヒトの育成など、これからも本邦における臨床薬理学の発展にお力添えをお願いする次第です。50周年に寄せて3650周年に寄せて45
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