50年のあゆみ
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4450周年に寄せて臨床薬理研究振興財団が設立50周年を迎えられましたことを心よりお祝い申し上げます。貴財団は昭和50年の設立以来、日本における臨床薬理学の発展と臨床薬理研究の振興を目的とし半世紀にわたりその使命を果たしてこられました。この間、多くの研究支援や人材育成、海外留学助成を通じて臨床薬理学の発展に貢献されてこられたことに深く感謝申し上げ、心より敬意を表します。私が初めて財団のお世話になったのは、2002年に第13回日本臨床薬理学会臨床薬理研究振興財団学術奨励賞を受賞したときでした。この研究助成を受けたことで、臨床薬理学研究者として認知され、研究活動の幅を広げることができたと感じています。その後、研究助成選考委員や財団理事、集中講座の実行委員として財団の活動に関わらせていただき、現在も50周年記念事業の準備委員を務めさせていただいております。この間、ご縁をいただいた理事長や事務局長の皆様を懐かしく思い出すとともに、こうした経験を通じて財団が臨床薬理学の発展に果たしてきた役割の重要性を改めて深く実感しております。臨床薬理学は、単なる薬理学の応用にとどまらず、基礎と臨床をつなぐ架け橋として、薬物の有効性・安全性の科学的検証と適正使用の確立に不可欠な学問です。また、研究の対象が人間であるがゆえに、倫理的・社会的な視点も求められる学際領域であり、その発展は、より良い医療の実現に直結しています。近年、医薬品開発の加速化、デジタル技術の進展、個別化医療の推進など、医療・薬学を取り巻く環境は大きく変化しています。こうした時代の変革期において財団の果たすべき役割はますます重要性を増しており、次の50年に向けて、さらなる発展が期待されます。財団を支えてこられた歴代の関係者の皆様のご尽力に深く敬意を表しますとともに、今後の財団のますますのご発展を心より祈念申し上げます。臨床薬理研究振興財団の設立50周年、まことにおめでとうございます。私は貴財団の研究奨励金と海外留学助成金の選考委員を務めさせていただきました。全国の教育研究機関からの応募書類に目を通し、一つ一つ評価をしていく作業は骨が折れるものの、様々な研究分野の第一線の研究者の申請書を精読することで自分の視野を広げることができて楽しい仕事でもありました。私は大学卒業後すぐに基礎医学の道を歩み始めましたが、当時はまだ新しい分野であった臨床薬理に関心を持ったのは1990年代に東京の国立小児病院付属の小児医療研究センター(現国立成育医療センターの前身)に在籍した時期でした。厚生省(当時)管轄の国立機関であったため、医療行政上の問題を知る機会も多く、小児を対象とする薬物開発が事実上不可能であることを初めて認識しました。そういえば小児に使用する薬品の用量は換算式を用いて決めることになっていたのでした。センター在籍時の上司は長年米国の大学で薬理学の教鞭をとられていた日本人でしたが、まもなく外資系製薬企業に転籍されました。お目にかかる都度、国際的に見た日本の薬物開発や臨床試験の問題点を伺うことが出来ました。その後母校に帰学して薬理学教育に携わることになりましたが、こうした研究センターでの見聞が臨床薬理学教育の重要性や研究動向に目を向ける端緒となったと思います。私自身の研究活動はNADPHオキシダーゼファミリーのNOX1に焦点を当てた基礎研究に終始し、これまで貴財団の奨励金に応募する機会が到来しませんでした。最近本分子を標的とする阻害薬の開発が進みましたので、今後臨床使用に関わる課題が浮上して関連領域から応募者が出るかもしれません。貴財団のご支援により後続の研究者が薬物治療における未解決の問題に取り組むことで、臨床薬理研究の裾野がますます広がり、我が国の薬物治療の発展につながることを祈念しています。渡邉 裕司臨床薬理研究振興財団設立50周年を祝して薬物治療の発展に向けて浜松医科大学 学長一般財団法人京都工場保健会総合医学研究所臨床薬理学研究センター矢部 千尋50周年に寄せて3550周年に寄せて50周年に寄せて

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