50年のあゆみ
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4250周年に寄せて臨床薬理研究振興財団が設立50周年を迎えられるという。まことにおめでたいことである。設立趣意書には、「基礎、臨床の科学的橋渡しとしての臨床薬理学」という言葉があり、今をさる50年前に、我が国に本財団を設立された先人と第一製薬株式会社の先見の明に改めて感じ入るところである。臨床薬理学による“基礎、臨床の橋渡し”には、趣意書にある「人間における薬物の有効性、安全性ならびにその正しい使い方の科学」という臨床薬理学の基本的役割とともに、 ヒトでの薬物反応を解析することによりヒトの疾病メカニズムを明らかにするという役割があるのではなかろうか。21世紀初頭のヒトゲノム配列の決定以来、医学の進歩はめざましく、いまや、基礎医学、臨床医学が渾然となって、医学の本来の目的である病気・病態の解明が行われている。まさに、Human Disease Biologyの時代が到来したといえよう。いまや、single cell RNA sequencingなどの単一細胞解析技術によってヒト疾患組織を解析して、その疾患に関与する細胞群と各々の分子的表象を明らかにでき、それら総体として疾患の景観を眺めることができる。しかし、景観のみでは病気・病態の仕組みを明らかにすることができない。やはり、何らかの形で治療的介入を行い、反応を見る必要がある。ここに期待されるのが臨床薬理学である。Gaddumの"Pharmacology is a Jack of alltrade"という言葉通り、臨床薬理学が様々なmulti-disciplineな技術を取り込み、分子レベル、単一細胞レベルでヒトでの薬物作用をunbiasedに解析し様々な疾患の成り立ちを解明することを期待して止まない。そうしてこそ、臨床薬理学は、医学全体に、また、薬物の新規開発にも大きく貢献できるだろう。この臨床薬理学の飛躍の時期に財団の変わらぬサポートを期待したい。臨床薬理研究振興財団(以下、財団)設立50周年、誠におめでとうございます。 私は1977年に慶應病院の内科研修医となり、2年の研修後に当時の本間光夫教授(故人)の下でリウマチ研究室に入局しました。その頃の研究室ではリウマチ膠原病疾患の自己抗体などの研究が盛んに行われていましたが、治療ではグルココルチコイドに頼らざるを得ない状況で、私はその代謝動態の研究を始めました。学会としては、内科学会とリウマチ学会の他、臨床薬理学会にも参加することになり、財団を知ったのもその頃からでしょうか。財団の研究奨励金は当時から件数も多く、また金額が大きいことから若手研究者には大変助かる存在であり、私自身もその支援を受けた一人でもあります。こうした研究費助成は多くの医療系組織などが行っていますが、財団がこの間一貫して「臨床薬理」に拘って事業を展開してきたことは特筆すべきで、その意味ではわが国唯一の財団と高く評価しています。 私は、その後慶應大学から米国NIHや都立病院を経て、聖マリアンナ医大、東邦大学へと異動しましたが、それぞれの所属先ではリウマチと臨床薬理の両領域で仕事ができる環境を与えて頂きました。臨床薬理領域では日本臨床薬理学会の学会長や理事長などを務めさせて頂き、学会としても財団の多大なご支援に大変助けられました。次の半世紀も、財団には何よりも臨床薬理研究振興に拘った運営を続けて頂くことを心より願っています。 財団のさらなるご発展をお祈り申し上げます。成宮 周川合 眞一ヒト疾患生物学時代における臨床薬理研究と振興財団これからも臨床薬理に拘ってご発展を!京都大学医学研究科メディカルイノベーションセンター神戸医療産業都市推進機構公益財団法人 日本リウマチ財団 理事長東邦大学 名誉教授50周年に寄せて3350周年に寄せて50周年に寄せて

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