41臨床薬理研究振興財団が設立50周年を迎えられたことを心よりお祝い申し上げます。 わが国では、近年、ドラッグ・ラグ、ドラッグ・ロスが深刻な問題となっています。その要因の一つに、従来の製薬企業中心の創薬からアカデミア創薬やそれを市場化するベンチャー企業が大きな役割を担う体制への変換があります。さらに、低分子化合物から生物学的製剤、遺伝子・細胞治療へと治療手段が多様化している点が上げられます。また、ゲノム創薬やAIの活用などモダリティーも広がっています。このように創薬環境が大きく変化していることに、日本の体制が十分追従できていないことが指摘されています。その中で、平成19年に始まった橋渡し研究支援事業は橋渡し研究支援機関へと発展し、また、平成27年からは開発後期の支援に重点をおいた臨床研究中核病院も医療法上に位置づけられました。これらによりAcademic Research Organization(ARO)が支援する医薬品開発も進んできましたが、最大の問題は人材不足です。特に臨床薬理の素養のある医師・歯科医師の育成が欠かせません。これは、まさに、本財団が50年にわたり取り組んできたところであり、財団創設に関わった方々の先見の明に敬意を表するところです。 創薬やその実用化の手法は、今後、ますます多様化し、複雑化すると予想されます。しかし、その成果物を市場に届けるには最終段階である臨床試験・治験を省くことはできません。それをいかに効率よく進めていくかが、今後、キーポイントになると考えられます。そのためにもより包括的な臨床薬理的視点を持った人材が不可欠であり、本財団の活躍に期待するところが大きいです。 50周年を機に、これまでの功績を振り返りつつ、さらなる発展を遂げられることを祈念いたします。公益財団法人臨床薬理研究振興財団が設立50周年を迎えられることに心よりお祝いを申し上げます。 私は、日本製薬団体連合会(日薬連)の会長であられた亡森田清理事長とご縁があり、貴財団の評議員に就任させて頂きました。弁護士の私にとっては全く未知の世界でありましたが、皆様に温かくお迎え頂き、感動したことを今でも鮮烈に記憶しております。 評議員の仕事をさせて頂きながら、貴財団が、臨床薬理の業務に携わる多くの若い研究者を支援し、わが国の医学、薬理の発展に多大な寄与をされていることを知ることができました。新型コロナウィルス感染症が拡大している時期に、全世界においてワクチンの開発が期待されましたが、それには地道な基礎的研究の積み重ねが実に重要な事柄であることを痛感させられました。新たな脅威に対して、医学や薬理の基礎的研究の厚みが大きな役割を果たすことを考えると、貴財団が約半世紀にわたり、臨床薬理の基礎研究と応用を支援され、若手の学者の育成、研究支援、留学支援等々を長年にわたり継続的に行われてきたことが、如何に貴重なものであったかを改めて感じるとともに、このような財団に関わらせて頂いていることに改めて感謝の意を表させて頂く次第です。 貴財団が、今後益々の発展を遂げ、わが国の臨床薬理の学会にさらなる貢献をされることを心より祈念し、お祝いの言葉とさせて頂きます。楠岡 英雄江口 正夫臨床薬理研究振興財団設立50周年にあたって公益財団法人臨床薬理研究振興財団設立50周年のお祝い国立病院機構 名誉理事長公益財団法人 臨床薬理研究振興財団 評議員江口・海谷・池田法律事務所3250周年に寄せて50周年に寄せて
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