50年のあゆみ
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35かつて私は第一製薬研究所で血液凝固線溶の研究に関わっており、導入品チクロピジンがラットで強力な抗血小板作用を示した結果に感動して自らこの製品を医薬品として開発したいと志し、本社開発部門に異動しました。財団発足と同じ1975年のことで学会は未だ「臨床薬理研究会」であった頃でした。第Ⅰ相試験について財団と相談したところ日本初の臨床薬理学講座が自治医科大学に設立され米国から若き海老原昭夫助教授が着任した、と教わりました。自治医科大学の臨床薬理、血液内科そして第一製薬との共同研究が行われ、その結果は本邦初の本格的臨床薬理研究として「臨床薬理」誌に掲載され、そして本剤は多くのエビデンスを得て「いま拓く抗血小板療法」と謳われ汎用されました。私が関わった他の事例に抗凝固剤エドキサバンがあります。動物とヒトでの効果が血液凝固作用を介してスムーズにつながっており複数の開発候補品の中から臨床薬理試験でベストとして選ばれ、世界中で汎用されています。一方動物とヒトとの間に断絶がある抗癌剤では多くの失敗を経験し、特に抗癌候補品DEについて臨床薬理研究を経ないまま世界の投資家に喧伝され結果的に企業信用を毀損することになりました。創薬に於いて臨床薬理研究がいかに大切であるかを自験例に基づいて本誌「臨床薬理の進歩」No32に特別寄稿しております。 第一三共経営統合を機に財団に移籍して学会の重鎮でもあった海老原昭夫理事・編集委員と再会を果たし、臨床薬理研究者を激励するには研究奨励金ばかりでなく研究成果も正当に評価されるべきである、とのご提言を賜りました。そこで第一三共の新経営陣のご支援も得て財団に「研究大賞」と「研究報告会」を新設しました。財団が50周年、研究大賞も18周年を迎え臨床薬理研究が益々発展する様子を拝見して感慨深い思いです。設立50周年、誠におめでとうございます。 私自身、2005年から2016年まで10年余り事務局長そして常務理事として在籍し、その間に設立30周年、40周年を迎えました。この度、50周年を迎え「記念誌」に執筆させて頂く機会を得ましたので、在籍当時を振り返り、いくつかの想い出を綴ってみたいと思います。・公益法人認定申請と認定:公益法人制度改革が2008年に施行され、当財団も公益財団法人に向け「定款、規程、事業内容、新体制に向けた人事」等をまとめ、公益認定等委員会に認定申請する事となりました。ただ、営業畑一途だった私にとっては新しい事が多く、試練の毎日でした。理事等役員の先生方をはじめ関係各位のご支援により申請出来、2010年12月「公益財団法人 」として認定された時は、ホッと胸を撫で下ろしたことを覚えています。・研究大賞の設立と研究報告会の開催:特に優秀で今後更なる発展が期待できる研究を表彰し、情報共有の場を作れないかと鈴木忠生氏(当時常務理事)と共に考え、表彰制度を「研究大賞」、臨床薬理研究に造詣の深い先生方との情報共有の場を「研究報告会」として、2008年にスタートしました。昨年で17回を迎え、臨床薬理研究の発展に少なからず寄与出来ているものと考えております。・臨床薬理学集中講義の開講:40周年記念事業の1つとして、若手医師・薬剤師等を対象に臨床薬理研究者の育成を目的に、中野重行先生、小林真一先生、松本直樹先生をはじめ多くの先生方にご協力頂き、2016年に講義形式そして体験型形式でスタートしました。 想い出はつきませんが、素晴らしい志を有する財団の一員となれた事は、一生の財産だと思っています。当財団の事業が、臨床薬理研究の更なる発展の一助となる事を祈念しております。鈴木 忠生鈴木 章人財団発足以来50年間お世話になっております財団設立50周年に寄せて元 公益財団法人 臨床薬理研究振興財団 常務理事元 第一製薬株式会社 代表取締役専務取締役研究開発本部長元 公益財団法人 臨床薬理研究振興財団 常務理事2650周年に寄せて50周年に寄せて

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