50年のあゆみ
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財団設立50周年を祝し、臨床薬理学の未来を共に築く徳島大学大学院医歯薬学研究部 医学域 臨床薬理学分野 教授徳島大学病院 病院長補佐徳島大学病院 薬剤部 薬剤部長、総合臨床研究センター センター長石澤 啓介臨床薬理研究振興財団設立50周年、誠におめでとうございます。 この50年間、貴財団が積み重ねてきた多大なるご尽力が、臨床薬理学の進歩に与えた影響は計り知れません。私はこれまで、貴財団の研究奨励金等の選考委員を務める機会をいただき、年々増加するハイレベルな研究申請書に深く感銘を受けてまいりました。貴財団の支援が次世代の研究者を育み、臨床薬理学の分野で革新的な研究の進展を後押ししていることを実感しています。臨床薬理学は薬物が人体に与える影響を科学的に解明し、患者に最適な治療法を提供するための基盤となる極めて重要な学問領域です。貴財団の支援によって実施される優れた研究成果が将来の医療に実装され、患者ケアの向上に大いに寄与することを心より楽しみにしております。 また、臨床薬理学集中講座では、多くの若手研究者が貴重な学びの機会を得ています。私たちの教室が中心となり、講座受講生同士で形成された研究者ネットワークを活用して多施設共同臨床研究を実施できたことは、大きな成果となりました。このネットワークは、今後の臨床薬理学研究の基盤構築に大いに役立つものと確信しています。集中講座で培ったネットワークを活用し、さらなる臨床研究を推進することで、我が国における臨床薬理学の未来に貢献してまいりたいと考えております。 今後も貴財団のさらなるご支援のもと、臨床薬理学の新たな発展に向けて共に歩んでいけることを大いに期待しています。引き続き、臨床薬理学研究におけるご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。貴財団のさらなる発展を心より祈念するとともに、関係者の皆様のご健勝とご多幸をお祈り申し上げます。 50周年に寄せて 認知症の画像バイオマーカー開発東北医科薬科大学 医学部薬理学教室 教授岡村 信行財団50周年おめでとうございます。私は「認知症における画像バイオマーカーの臨床評価」をテーマに研究助成を受け、第10回研究大賞を受賞いたしました。この場をお借りして、助成後に得られた成果をご報告申し上げるとともに、貴財団のご支援に深く感謝申し上げます。 近年、アルツハイマー病治療薬として抗アミロイドβ抗体薬が承認され、アルツハイマー病は原因治療が可能な疾患へと変貌を遂げつつあります。こうした原因治療薬の導入には、標的蛋白の脳内蓄積状況を正確に把握することが不可欠であり、アミロイドPETやタウPETがその重要な役割を担います。またアルツハイマー病の初期病変形成には、反応性アストロサイトが深く関与していることも明らかになっており、神経炎症の生体脳での評価も重要な課題とされています。 私たちがタウPETプローブとして開発した[18F]THK-5351は、その後の解析によりモノアミン酸化酵素へのオフターゲット結合が存在することが判明しました。このため、タウのバイオマーカーとしての普及は断念せざるを得ませんでした。しかし、副作用を主作用として活用する新薬開発の手法にならい、オフターゲットをオンターゲット化する新たなアプローチを採用した結果、神経炎症を画像化するPETプローブ[18F]SMBT-1の開発に成功しました。このプローブを用いたPET検査により、反応性アストロサイトの量と分布を計測することが可能となり、神経炎症の新たなバイオマーカーとしての活用が期待されています。今後も国内外の共同研究者と連携しながら臨床評価を進め、その成果を認知症の発症予防に役立てたいと考えております。 末筆ながら、貴財団のますますのご発展を心よりお祈り申し上げます。50周年に寄せて2450周年に寄せて33

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