臨床薬理研究振興財団設立50周年に寄せて筑波大学医学医療系臨床薬剤学 教授筑波大学附属病院薬剤部 薬剤部長本間 真人臨床薬理研究振興財団設立50周年、誠におめでとうございます。これまで財団の運営を支えてこられた、歴代の役員と事務局の皆様に心よりお礼申し上げます。 私が財団と関わるきっかけは、第32回研究奨励金に応募し、採択されたことでした。当時、病院薬剤師の業務が病棟にも展開し、薬学教育が6年制に移行する中、私は副薬剤部長の立場で、この先の病院薬剤師が目指すべき研究の方向性を模索していました。医療従事者の研究は、ClinicalQuestion(CQ)の解決であり、その成果が即座に治療に活かせる点でニーズは高いと思います 。病棟への業務展開により、薬剤師は医師・看護師に加えて、患者からも直接疑問を投げかけられ解決を求められる機会が増え、また、薬学生も実習を通して、薬物治療の課題に直面することは明白でした。これらの課題をCQとし、解決する研究能力が薬剤師には必要であると感じていました。 採択された研究は、Naチャネル(SCN)阻害薬のTDMに関する内容で、医師から「添付文書の用量では効果がない症例に、増量を行うことで効果が期待できるか?」とのCQでした。薬剤部での実習で訪れた薬学生(当時は修士学生)と始めた本研究は、その後の実習生や本院の薬剤師に引き継がれ、10年をかけて得た結論は「SCNとCYP2D6の遺伝子多型解析の活用により、増量効果を期待できる症例を判別できる」と単純なものでした。しかしながら、CQを提案した医師からは「増量効果の根拠が明確になった」との評価をいただき、関わった薬学生や薬剤師の研究能力の向上にも寄与できたと自負しております。 当財団が、臨床薬理学の研究支援を通じて、今後も医療現場でのCQに取り組む薬学生や薬剤師の研究能力の向上にも貢献されることを、心より期待しております。 財団の小児臨床薬理学への貢献に感謝申し上げます国立成育医療研究センター 研究開発監理部 開発企画主幹中村 秀文子どもの薬物治療には、年齢に応じて、用法・用量、適切な有効性の評価指標、副作用等に配慮が必要となります。小児の臨床薬理はこれらに科学的根拠を与えることを目指すものであり、新生児から思春期までの幅広い年齢における「薬物治療最適化のための研究」及び「その科学的結果を活用した薬物治療実践」のための学問です。また、小児の適応外使用解決、医薬品開発推進、医薬品評価方法の検討など、規制科学的な取り組みも重要です。このため、臨床薬理学の本邦における普及は、小児薬物治療の質の向上に大変重要な役割を持ちます。本財団の臨床薬理学集中講座には、これまで多くの小児科医・小児薬剤師が参加して研鑽を積み、彼らが我が国の小児臨床薬理学の研究及び実践に大きく寄与してきました。また研究助成事業においても、多くの小児科領域の研究が行われてきましたが、特に2023年からは、研究奨励金の増額及び増枠と小児臨床薬理研究支援枠の設定が行われ、2024年度には6件の研究奨励金が新たに小児科領域の研究に授与されています。奨励金を獲得された先生方が、質の高い研究を遂行され、その成果が臨床に還元されることを嬉しく思っております。私が運営委員長を務める日本小児臨床薬理学会は、ここ数年日本臨床薬理学会との共催シンポジウムを開催し、2024年の日本臨床薬理学会学術集会では、小児関連の教育講演とシンポジウム3件も開催されておりますが、このような活動の活発化は、長年にわたる本財団のご尽力の賜物であると考えております。小児臨床薬理学会の盛り上がりを一時的な流行にすることなく、さらなる活性化に繋げられればと願っておりますし、そのためにも財団には是非、引き続きご支援を頂けますと幸いです。この度は財団設立50周年、大変おめでとうございます。50周年に寄せて1750周年に寄せて50周年に寄せて2650周年に寄せて
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