19臨床薬理研究振興財団設立50周年をお祝い申し上げますとともにそのサポートに心よりお礼申し上げます。私は国立がんセンター在籍中2度にわたり当財団よりサポートを受けております。最初は私が国立がんセンター研究所の薬効試験部長になった翌年の平成2年(1990年)に研究奨励金、またその5年後の、平成7年(1995年)には海外留学等補助金を贈呈されております。45-50歳とまさに働き盛りの頃でした。ちょうど対がん10か年総合戦略の初期にあたり多くの薬理学関係の研究者を海外より募り国際的研究を展開しました。AACRでミニシンポジウムを含め25題の演題発表を行い世界チャンピオンになった事もありました。感謝しております。臨床薬理学は地味な学問ですが薬剤の最大効果を得るうえで極めて重要な領域です。PK/PDそしてその背景にあるPGをすべて含有する学問です。最近アカデミアではPGに重点が置かれPK/PDの考え方がおろそかにされている気も致します。私はそのころ薬剤特に抗悪性腫瘍薬の効果とタンパク結合の問題に興味を持っていましたが、ケミカルアッセイではなく実際薬剤投与を受けた患者の血清の抗腫瘍効果をコロニーアッセイで検討する方法を開発し、タンパク結合に関する疑問を解決することができました。また免疫反応のPK/PDをコロニーアッセイで定量的に解析する方法も開発しました。もちろん通常の薬理学の手法で得た成績の分析が背景にあったことは言うまでもありません。 最初に贈呈を受けた時よりすでに35年たちました。Driver mutationに対する新しい分子標的治療、免疫チェックポイント阻害薬の開発とともに臨床薬理学も少しずつ変貌してきていると感じます。しかし我々が30-40年前にやったことはけっして”おわこん”ではないと思っています。今後ますます臨床薬理分野の研究が進むこと祈っております。臨床薬理研究振興財団の設立50周年に際し、お祝いと共に医学薬学の研究振興において本財団が果たしてこられた多大なるご貢献に心より感謝申し上げたい。 50年という年月を私自身の研究生活と重ねると、設立の年昭和50年は京都大学薬学部で故瀬崎仁先生が主宰される薬剤学講座の修士課程大学院生として研究を始めた時期にあたる。薬物投与の方法論を研究する薬剤学において、当時の研究の最前線は生物薬剤学分野の中の薬物腸管吸収の分子機構の解析であり、私はその延長線上で薬物体内動態の精密制御を目指すDDS(ドラッグデリバリーシステム)研究をテーマとして与えられた。それまで基本的に物質の科学として薬学を学んできた私には、薬物の体の中の動きを理解しその制御技術を開発して最終的に治療効果を確認するという新しいサイエンスの概念の構築に戸惑う日々であったが、本財団が目指す薬理学を基礎として人間における薬物の有効性、安全性ならびにその正しい使い方の科学の確立を目指す学問という臨床薬理学の位置づけより多くの示唆を得た。また、財団が設定された研究奨励金の募集主題や財団誌「臨床薬理の進歩」に取り上げられた話題は常に時宜を得て薬物治療の進歩を的確に反映、予測するものであり、50年間これと並走させて頂くことにより私は非常に多くを学んだ。後年薬事食品衛生審議会等で薬事行政に関わり、最近はレギュラトリーサイエンス領域の学会活動にも参加させて頂いている私にとって、医薬品モダリティーの変遷をはじめとする医学薬学の急速な発展を支えてきた本財団の存在は今でも大きい。 本財団では瀬崎先生を始め故北澤式文先生など多くの先輩また研究室出身者がその運営に加わりまた助成金授与等の形でご支援を頂いてきた。本財団の益々のご発展をお祈り申し上げたい。西條 長宏橋田 充臨床薬理研究振興財団設立50周年の功績と今後の展望財団設立50周年を祝して:多くの学びを振り返る医療法人社団友好会 秋葉原・目黒メディカルクリニック 副院長東京医科大学 客員教授京都大学高等研究院1050周年に寄せて50周年に寄せて
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