臨床薬理研究振興財団50周年をお祝いして元 第一三共株式会社 代表取締役社長元 公益財団法人 臨床薬理研究振興財団 評議員庄田 隆臨床薬理研究振興財団がこのたび設立50周年を迎えられましたことを、心からお祝い申し上げます。その設立趣意書にある通り、本財団は臨床薬理学の重要性に一早く着眼し、「臨床薬理研究を奨励推進し、臨床薬理学の普及と臨床薬理研究者の育成を図る」を目的に半世紀の永きにわたり我が国の臨床薬理研究の振興に多大な貢献を果たされています。 出捐会社の代表として2007年の第一三共株式会社の発足時が本財団とのご縁の始まりですが、公益財団法人に移行した2010年からは評議員を務めさせていただきました。特に印象深く思い出しますのは本財団が毎年開催する「研究報告会」への参加です。その年の研究大賞、財団賞の受賞者および海外留学修了者からの研究成果発表とその後の討議に接し、臨床薬理学とその関連領域が如何に多様で多岐にわたる研究テーマを対象とした研究分野であるかを改めて知り、最先端の研究内容に触れる貴重な機会となりました。本財団が毎年発刊し巻数を重ねている「臨床薬理の進歩」も財団支援による臨床薬理研究成果が纏められた財団活動の財産であり、本財団の研究奨励金、海外留学助成金などの支援を受けた方々が国内外で第一線の研究者として活躍し、その多くの方が指導的な立場に就かれていることからも本財団が果たしている役割の大きさが分かります。 若手研究者が臨床薬理学を体系的・集中的に研鑽する場として「臨床薬理集中講座」の開講など比較的新しい事業もあり、今後とも時代のニーズに沿った事業活動を通じて臨床薬理学の更なる振興に貢献されることを期待しています。設立50周年という大きな節目を契機として本財団が益々発展されますことを心より祈念いたします。 設立50周年誠におめでとうございます東京薬科大学薬学部 名誉教授岡 希太郎思い起こせば財団設立5周年の1980年、日本臨床薬理学会が発足しました。そしてその年、東京薬科大学に臨床薬理学教室が新設されました。医学教育には三本柱(教育、研究、診療)があるのに、薬学教育には診療が抜けている、そのために新しく臨床薬理学教室を作って、薬化学の専門家が主宰することになりました。薬学部が得意とする研究部門のうち、微量定量分析を病院内で行って、医薬連携の実を造りたいとの東薬大学長の思いがあったようです。当時、薬化学教室の専任講師だった私が最初の教員に指名されました。2年間の国内外研修中に実感したこと、それは診療現場の医師たちに、薬学の有機化学や分析化学の技術には、「直ぐに診療に応用できるパワーがある」ことを直感してもらえることでした。これは丁度、臨床薬理学誕生の目的、「薬理学は動物からヒトへ変わらないとヒトの役には立たない」と同じコンセプトだったのです。ヒトの薬理学を診療現場で実学として活用するには、ヒトの血液や生検組織の薬学的取り扱いを極める必要がありました。 私が選んだ医薬連携の相手校は東京医科大学でした。両校は姉妹校となって臨床薬理学共同研究を行った結果、両学部の博士論文が以前には無かった内容に変わりました。そして教室の院生たちが、進んで医学部にお邪魔して、医療現場で保険対象外の血中濃度の測定や治療薬の感受性テストを実施したのです。そして、担当医の治療方針の作成に大いに役立つデータを論文に書いて、臨床系国際誌を中心に発表してきました。その途上で当財団から貴重な研究費配分を受けましたし、 J Clin Pharmacologyからは年間最優秀論文賞を戴いたこともありました。これらはどれも学会と財団があってこその成果でした。この場をお借りして、厚く御礼申し上げます。合わせて、半世紀に及ぶ財団活動に心から敬意を表する次第です。50周年に寄せて650周年に寄せて15
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