1450周年に寄せて公益財団法人臨床薬理研究振興財団の設立50周年を心からお祝い申し上げます。1991年に評議員として選んで頂き、約30年近く務めさせて頂きました。この度、50周年という節目に「財団功労賞」を賜るとのことで、大変光栄に存じます。 小児薬物療法に関しては、小児における用量や副作用などが十分に研究されていない成人向けに承認された薬に頼らざるを得ず、それ故に子供にとって安全で効果的な治療を確保するには課題がありました。この状況は「Therapeutic Orphan」と呼ばれていました。この問題を解決するために、国内外で様々な取り組みが行われ、貴財団の研究支援のお陰で、日本においても小児領域における医師主導型治験が実現するなど、小児臨床薬理学の研究が進展したことは大変有難く、その様な財団の貴重な支援の一端に関わらせていただいたことを深く感謝いたします。 貴財団は、昭和50年という日本における「臨床薬理学」の認知がまだ浅い時代に設立され、以来、臨床薬理学の発展のために多大なご尽力をされてきました。特に設立当初に奔走された第一製薬をはじめとする関係者の皆様、そして長年にわたり熱意を持って支援を続けられた第一三共の方々に改めて敬意を表します。 今後も貴財団がさらなるご発展を遂げ、輝かしい成果を上げられることを心よりお祈り申し上げます。臨床薬理研究振興財団設立50周年、誠におめでとうございます。 本財団とのお付き合いは、1982年に第7回海外留学等補助金の交付を受け、アメリカにおける免疫制御の臨床薬理の実情を視察する機会を与えていただいて以来です。2000年から2022年まで評議員を務めさせていただき、この間、研究助成金審査委員も3期ほど担当しました。 2008年から始まった研究報告会の演題内容の質が年々向上しているのを見るのは、たいへん喜ばしく、我が国の臨床薬理学の発展に当財団が多大なる貢献をされてきたものと信じています。 私自身の臨床薬理体験として記憶に残っているのは、1987年に設立したJapan Adult LeukemiaStudy Groupで成人急性骨髄性白血病の地固め療法期におけるシタラビン大量療法を導入した際、欧米で採用されていた3g/sqm1時間一日2回点滴投与法を、本剤が下山・木村のtime-dependentの抗がん薬に属することと相談に乗ってもらったMD Anderson Cancer Center のDr. Plunkettらの臨床薬理学的検討から、有効レベル以上の血中濃度を長時間維持するのが重要と考察し、2g/sqm 3時間一日2回点滴投与法を採用したことです。普通量は100㎎/sqm持続点滴ですから、その60倍という高額な薬代を40倍に抑えることができました。2000年に日本新薬が大容量バイアルのシタラビンNを発売した際、添付文書に12時間ごとに2g/sqmを3時間点滴投与と記載していますが、このような経緯を知らない若い医師たちは、欧米との容量差に疑問を感じているかも知れません。 抗がん剤の主流がかつての殺細胞的抗がん剤から分子標的薬、抗体薬や免疫療法薬へと代わっても、pharmacokineticsやpharmacodynamicsの重要性は変わらないと信じていますので、今後も当財団が我が国の臨床薬理学研究の振興に大いに貢献してくれるものと期待しています。松田 一郎大野 竜三臨床薬理研究振興財団設立50周年のお祝いに寄せて臨床薬理研究振興財団設立50周年に寄せて熊本大学 名誉教授元 北海道医療大学 学長愛知県がんセンター 名誉総長50周年に寄せて550周年に寄せて50周年に寄せて
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