1250周年に寄せて設立50周年という大きな節目を迎えるにあたり元財団理事長(在任期間2021~2024年)として一言ご挨拶を申し上げます。 当財団は、薬物療法を支える臨床薬理学の重要性が高まる今日、「臨床薬理学を奨励、臨床薬理研究者の育成に助成し以って、わが国における新しい化学技術の開発と応用そしてイノベーションに貢献すること」を使命として活動しています。その歴史は古く、昭和50年(1975年)9月に第一製薬株式会社(統合会社である第一三共株式会社の前身の一社)の創業60周年を記念して設立され、本年度設立50周年を迎えました。元財団理事長として改めて、歴代の財団役員(評議員・理事)ならびに関係の先生方、共に歩んできた日本臨床薬理学会の諸先生方、そして何より出捐会社として本財団を支えてきた第一製薬および第一三共株式会社に厚く御礼を申し上げます。 設立以来、日本臨床薬理学会とのパートナーシップの下、様々な研究振興活動を積極的かつ継続的に展開してきました。具体的には、研究奨励、海外留学助成、若手研究支援、臨床薬理学集中講座、そして日本臨床薬理学会にて募集・選考される臨床薬理研究振興財団賞など、時代の変化に合わせながらも積極的に活動を実施してきました。50年という長い歴史の中にはいろいろな課題・困難があったと思いますが、その中でも2019年末に始まったコロナ禍は、当財団の活動にも多大な影響を与えました。主要なイベントである臨床薬理学集中講座が中止となったほか、評議員会・理事会などの役員会議の面談での開催ができなくなりました。さらに、これまでは面談での実施が当り前であった諸活動が、ウェブ或いはビデオを経由しての実施ということになりました。当時、運営を担当した財団の事務局は慣れない作業に戸惑い、ウェブ開催による理事会が何度も中断するなど冷や汗の連続でした。それでも試行錯誤を繰り返しながらもチーム一丸となり、何とかやり遂げたことを昨日の様に思い出します。 現在は、役員会議をはじめ、集中講座など諸事業などでウェブを駆使し実施しており、より効率的・効果的に運営することができています。コロナ禍という困難ではありましたが、正に“けがの功名”といったところで、事務局の人的リソースが限られる財団活動の運営の在り方を根本から見直すことができました。 1976年の設立以来、適宜、財団の活動が見直されてきていますが、最近では2023年に研究奨励金の増額・増枠および小児臨床薬理研究枠の設置、海外留学助成金の増額、若手研究支援金の創設など、その対象・支援のあり方も大きく変わってきています。 設立以来50年間の財団活動を施策毎にその件数を集計すると、次のような結果となりました。□ 研究奨励金(1976年~2024年) 628件□(旧)研究助成金(1976年~2004年) 202件 *2005年より研究奨励金に統合□ 海外補助金/海外留学助成金(1976年~2024年) 227件 □ 集中講座の参加人数(2016~2024年) 338名 *除く2020年(コロナ禍により中止) 財団設立から今日まで50年間にこれだけの活動が出来たことは、大変誇らしく、歴代理事長の一人として改めて、これらの活動を支えてくださった諸先生方、関係各位に感謝を申し上げる次第です。 基礎と臨床の科学的な橋渡しとしての臨床薬理学の重要性が広く認識されていますが、2006年には大学の薬学部が6年制に移行し、ますます薬物治療(学)の重要性が増してきています。また、医学・薬学の進歩により、数多くの優れた医薬品が創製され、一部の疾患においてはUnmet MedicalNeedsが充足されつつありますが、未だに医療における薬物療法の役割は大きく、当財団の存在意義はさらに大きくなってきています。これまで50年という長い歴史の中でいろいろな変遷はありましたが、当財団のこれまでの活動は正しくその設立趣意に合致したものであり、微力ながらも、これまでの本邦の臨床薬理学の発展に寄与できたものと考えます。改めて関係各位のご協力、ご尽力に感謝するとともに、今後も臨床薬理学の発展の一助となるべく、当財団がその役割を果たしていくことを期待します。公益財団法人 臨床薬理研究振興財団 顧問元 第一三共株式会社 代表取締役副社長元 公益財団法人 臨床薬理研究振興財団 理事長齋 寿明日本の臨床薬理研究の発展への寄与50周年に寄せて350周年に寄せて50周年に寄せて
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