50年のあゆみ
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大分大学医学部 医療倫理学講座 教授ができたかけがえのない時間でした。全ての講義が素晴らしく充実したものでしたが、中でも最終日に行われた中野重行先生による「治験におけるインフォームド・コンセントのあり方〈ロールプレイ法による演習〉」が心に残っています。不安と緊張が入り混じり始まった合宿生活でしたが、昼夜を共にする受講生との絆は自然と日に日に強くなり、夕食後の楽しい語らいのひと時を今も思い起こします。講座終了後の最初の10年間は講座での学びを礎に新GCPに従った適切な治験の実施に、次の10年間は世界同時開発の動向に応じた信頼性の高い治験、中でも早期段階の探索的試験(First in Human study、患者を対象とした探索的臨床試験、各種バイオマーカーを利用した臨床薬理試験など)の実施に力を尽くしました。現在は北里大学病院に新設されたHRP(Human Research Protections)室の室員として信頼性の高い臨床研究を推進するための方策等を考える機会をいただくと共に、2021年からは薬学部に新設された臨床薬剤疫学教室で活動する機会をいただいています。私を臨床薬理学の世界に導いてくれた「臨床薬理学集中特別講座」には感謝の想いしかありません。講座を終えた後も、共に学んだ受講生達が第一線で輝く姿に勇気を貰いながら今日までがんばってこられたように思います。臨床薬理学集中特別講座にいただいた全ての出会いと支えに心から感謝し、これからもいただいた一つ一つの機会を大切に、力の限りを尽くしたいと思います。今井 浩光第1期の第5回臨床薬理学集中特別講座に参加しました。私は大分医科大学(現:大分大学)医学部の出身ですが、この大学では「臨床薬理学」が臨床系講座として配置されています。学部生として4年次に系統講義を受け、5年次に臨床実習に参加しました。当時の教授は私の恩師である中野重行先生です。私は決して真面目な学生ではなかったのですが、臨床薬理学のユニークさになぜか(?)惹かれました。理論に則った薬物治療学を学べば、ベテラン医師のさじ加減よりもよい治療ができる、ということに魅力を感じたのでしょう。卒後に内科、心療内科の研修を受けた後、母校の臨床薬理学教室に大学院生として戻りました。本集中特別講座に参加させていただいたのは、大学院生としてどのような臨床薬理研究を始めようか、と考えていた時期でした。学部生の時に触れていたとはいえ、1週間まさに集中して臨床薬理学に取り組むのは、たいへんでありながら大切な時間でした。財団の方から当時のプログラムの写しをいただき、改めて贅沢な学修機会であったと感じます。また、この講座での大きな収穫は、他施設の方、特に薬剤師の方々との出会いをいただいたことです。講座終了後、薬物治療で迷った際に薬剤師はどう考えるだろうと思い、メールアドレスを交換していた複数の先生に意見を求めたこともありました。私が心療内科の研修を行ったのは、「ヒトのこころとからだの関係性」に興味を持ったからです。臨床薬理学では、「ヒトとクスリの関係性」について、さまざまな視点や切り口があることを学びました。現在、私は医療倫理学の教育と研究をなりわいにしていますが、医療の倫理では「ヒトとヒト(患者と医療者など)の関係性」、「ヒトと医療技術や社会の関係性」が主たるテーマとなります。振り返ると、私は何かと何かが出会い、その間で起こる相互作用に興味があるのかもしれません。臨床薬理学は学際的な学問領域です。さまざまな人が、ある時期、場を共有して、仲間として共に学ぶことはたいへん貴重な機会であると思います。今後、集中講座に参加される皆様にも、本講座が意義あるものになることを祈念いたします。臨床薬理学集中特別講座参加の経験とその後(2001年第1期第5回受講)111

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