50年のあゆみ
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北里大学北里研究所病院 研究部・薬剤部 副部長し上げたいと思います。半年前に製薬企業研究所から熊本大学医学部附属病院薬剤部および熊本大学大学院薬学研究科の教官(国立大学法人化前)として着任しましたが、大学病院での教育、研究、診療のバランスについて悩んでいました。正直なところ、当時は、臨床薬理学、臨床試験、治験、IC(治験委員会)の定義すら知識が不足しておりました。この講座を通じて、医薬品開発における臨床試験の入り口である臨床薬理学について学び、創薬研究開発に必要な臨床薬理学の考え方を習得し、臨床研究の立案に大いに役立ちました。すべての講義は非常に有益で、ノートを残しているのですが、特に佐々木康綱先生(国立がん研究センター東病院(当時))からいただいた抗がん薬の臨床薬理に関する基礎をまとめたスライド資料は、今でも参考にしています。また、広島大学医学部第2内科(当時)の礒部威先生との意見交換で、「実臨床で疑問に思うこと(クリニカルクエスチョン)を解決するために薬物血中濃度測定を行いたいが、高速液体クロマトグラフィーの使い方が難しく、検量線もうまく描けない」というニーズを拝聴し、その後24年にわたる抗がん薬の臨床薬理に関連する共同研究のスタートとなりました。着任した研究室には高速液体クロマトグラフィーが備えられていたため、抗がん薬の血中濃度測定システムの構築と、臨床医にデータをフィードバックする研究体制の構築を開始しました。多くの臨床医と共同で抗がん薬の臨床薬理に関する論文を複数発表することができました。また、臨床研究を実施する際には、GCP(Good Clinical Practice)に従い、研究計画書の作成、IRB(倫理委員会)の承認、IC(インフォームド・コンセント)の取得などの重要な要素を小林真一先生(聖マリアンナ医科大学(当時))、中野重行先生(大分医科大学(現:大分大学医学部))から学ぶ機会もあり、トランスレーショナルリサーチを実践する上での基盤を築くことができました。近年、ゲノム医療、核酸医薬、細胞療法などの新技術が医療現場に導入されつつあるため、これらの新技術に適応できる臨床医や医療従事者の育成が急務です。今後も臨床薬理学集中講座の受講生から、次世代の創薬研究者が育成されることを期待しています。氏原  淳臨床薬理研究振興財団が設立50周年を迎えられたことを心からお祝い申し上げます。私は2000年7月、第1期第4回の集中特別講座に参加しましたが、その時の経験は今でも私の専門的なキャリアに大きな影響を与えています。この講座では、臨床薬理学の最先端の知識と技術が豊富に提供され、参加者一人一人の専門性を高める機会となりました。初めての泊まりがけでの集中スケジュールでは、臨床試験の設計、データ解析、新薬開発のプロセスなど、多岐にわたるトピックを学びました。これらの知識は、現在の業務の基盤となり、治験や臨床研究に携わる者としての成長に大いに寄与してきました。特に思い出深いのは、中野重行先生の説明文書の作成とそれを利用したインフォームド・コンセント ロールプレイでした。与えられたプロトコルに則った説明文書を夜遅くまで仲間とともに作成し、それを使って実際に治験説明のロールプレイを行いました。実際に同意説明の経験がほとんどなかった私にとって、そこでの経験がその後のインフォームド・コンセントの実践や、被験者対応に関わる後輩の指導に大きな力となりました。また、この講座を通じて出会った人々との交流は、私にとって非常に貴重な経験となりました。参加者はさまざまな背景を持ちながらも、臨床薬理学という共通の分野で結ばれ、知識や経験を共有し合いまし臨床薬理研究振興財団の設立50周年に寄せて(2000年第1期第4回受講)109

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